移転価格税制とは – 第1回

「移転価格」は、親・子会社などの資本関係のある法人間で行われる取引価格のことを言います。移転価格を操作することで、他国へ所得を移転することができるため、これを防ぐ目的で日本ではもちろんのこと、世界中ほとんどの国と地域にそれぞれの移転価格税制が存在します。なお、ここで重要なのは、所得を移転する意図があったかどうかに関係なく移転価格税制は適用されるという点です。

それでは、具体例を見ながら、移転価格を間違うとどのような問題が起きるのかを見ていきましょう。

日本の親会社であるA社が、米国にある子会社B社に130で商品を販売したとします。この130が移転価格です。B社は130円で仕入れた商品を180で資本関係のない顧客に販売したとします。A社とB社の所得及び納税額は次のとおりだと仮定します。

 

例1:申告時の納税額

A社 B社
売上 130 売上 180
原価 100 原価 130
粗利 30 粗利 50
費用等 10 費用等 10
課税所得 20 課税所得 40
税金 (40%) 8 税金(40%) 16

ここで、A社に日本の税務当局の移転価格調査が入り、「移転価格の130は間違っている。正しい移転価格は150である。」として、移転価格を修正されたとします。すると、2社の課税状況は次のように変化します。

 

例2:移転価格調査後の納税額

A社

(売上を修正)

B社

(変化なし)

売上 150 売上 180
原価 100 原価 130
粗利 50 粗利 50
費用等 10 費用等 10
課税所得 40 課税所得 40
税金 (40%) 16 税金(40%) 16

例1ではグループ全体の納税額は24(A社=8 + B社=16)でしたが、例2では32(A社=16 + B社=16)に増加してしまいました。A社は日本、B社は米国に存在し、それぞれの国で納税していますから、A社側で移転価格を修正されたからと言って、B社側の移転価格が自動的に修正されて支払った税金が返ってくるわけではありません。

それでは、はじめから正しい移転価格(=150)で取引をしていたならばどうだったでしょうか?

 

例3:正しい移転価格で取引していた場合の納税額

A社 B社
売上 150 売上 180
原価 100 原価 150
粗利 50 粗利 30
費用等 10 費用等 10
課税所得 40 課税所得 20
税金 (40%) 16 税金(40%) 8

もし、はじめから正しい移転価格(=150)で取引をしていたならば、グループ全体の納税額は24(A社=16 + B社=8)だったはずです。例2のグループ全体の納税額は32、例3は24ですから、その差は8であり、これがいわゆる二重課税状態です。

このように、移転価格が間違っていると判断された場合に二重課税の状態となり、本来なら支払わなくてよいはずの税金が発生してしまいます。このような場合には、相互協議といった納税者のための救済措置も用意されてはいるのですが、二重で支払った税金の還付が保証されているわけではない上、対応のためにかかる時間や交渉のために外部専門家を雇うコストなども発生します。更には、「申告漏れ」や「所得移転」といった報道による企業イメージの低下も考えなくてはなりません。このような事態を防ぐためにも、あらかじめ移転価格税制を意識した対応をしておくことが重要となるのです。

次回は、移転価格税制の対象となる取引について解説します。

 

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