ドル高円安等の影響に関わらず、日本から米国企業への買収に関しての税務デューデリジェンスのお問い合わせは引き続き受けています。対象会社の税務リスクを把握することは重要です。今回はデューデリジェンスの一翼を担っている税務デューデリジェンスについてご説明します。対象会社が法人なのかパススルーの会社なのかにより、デューデリジェンスの内容が大きく異なります。また、株式や持分の買収なのか、それとも資産買収なのかによっても大きく異なってきます。以下は対象会社が法人で株式買収の場合の主な調査内容を例として挙げ、さらに買収方法や買収後の検討課題も例に挙げます。
税務デューデリジェンスの調査項目(例)
- 法人税:
- 米国内で関連会社があるのかどうか?連結納税をしているのかどうか?州では合算申告をしているかどうか?
- 米国外に子会社や支店があるかどうか?(Form 5471等は申告されているかどうか。)
- 米国外子会社の所得が米国で課税対象かどうか(Subpart FやGILTI等)
- 主な税務調整項目は妥当に計算されているかどうか?
- リスクがあるような税務ポジションがあるかどうか?
- 過去に税務調査が行われたことがあるのかどうか?あった場合は税務調査の結果はどうだったのか?
- 時効期間の考慮
- 繰越欠損金や税額控除等の有無や妥当性。過去の株主変更による使用制限があるかどうか?
- 州税ネクサス
- 関連者間取引があれば移転価格について検討されているかどうか?移転価格スタディははされているかどうか?
- 会計上、税務の偶発債務が計上または開示されているかどうか?
- 売上税・使用税:
- 売上税・使用税の申告をしているかどうか?
- 売上税のネクサス、未申告の州があるかどうか?
- リスクがあるような税務ポジションがあるかどうか?
- 取引が非課税の場合は、顧客から非課税のCertificateを入手しているかどうか?
- 過去に税務調査が行われたことがあるのかどうか?あった場合は税務調査の結果はどうだったのか?
- 給与税:
- 従業員 vs コントラクター
- 給与は妥当な範囲かどうか?
- その他:
- 税務申告書を作成した会計士事務所のサイズや専門分野
- 米国外での活動はあるのかどうか(外国での申告義務の有無)
- 米国外への支払いは源泉税の対象かどうか
税務デューデリジェンスと同時に、買収方法の検討も必要となります。
- 買収形態(例):
- 日本の会社が直接買収するのかどうか?
- 既存または新設の米国子会社が買収するのかどうか?
- 株式買収か資産買収か?株式買収でも税務上は資産買収という選択が可能な場合もあります。
- 買収後の検討事項(例):
- 買収前の税務リスクは買収後も引き継がれるのか?
- 買収後の繰越欠損金の使用制限はどうなるのか?
- 買収後の連結納税や合算申告の考慮
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