新収益認識基準
■概要
米国会計基準審議会(FASB)及び国際会計基準審議会(IASB)は、2014年5月に両会計基準のコンバージェンスの一環として新たな収益認識の基準をそれぞれ発行しました。それにより米国会計基準及び国際会計基準における収益認識に関する規定が、それぞれ発行された新たな基準に置き換えられることになります。
■米国会計基準における適用日
適用日 |
公開営利企業及び一部の非営利企業 |
他のすべての企業 |
右記以降開始する事業年度 |
2017/12/15* |
2018/12/15* |
右記以降開始する事業年度に含まれる期中期間 |
2017/12/15* |
2019/12/15* |
*国際会計基準(IFRS15)では事業年度2018年1月1日以降に開始する全ての企業に新基準の適用が求められています。
■基本原則
収益は顧客への物⼜はサービスの移転と交換に企業が権利を得ると⾒込まれる対価により認識されます。
■5つのステップに基づく収益認識 (ASC 606-10-25)
Step 1: 顧客との契約の識別
Step 2: 契約における独立した履行義務の識別
Step 3: 取引価格の決定
Step 4: 独立した履行義務に取引価格を配分
Step 5: 各履行義務の充足による収益認識
■各ステップにおける論点
顧客との契約の識別 (Step 1)
新基準上では一般的な契約の識別において従来の基準と大きな相違は無いが、企業が契約金額より少ない取引価格で対価の回収可能性を評価することが可能となるため、収益計上のタイミングに影響を及ぼす可能性があります。(例:商品又はサービス提供後のディスカウント等を企業が意図している場合)
契約における独立した履行義務の識別 (Step 2)
新基準で定める独立した履行義務を識別するために、企業は提供している商品又はサービスに独立した履行義務があるのかを判断し、それらが互いに区別されるべきものなのかを評価する必要があります。(例:商品の販売及び設置サービス等が混同した契約の場合等)
取引価格の決定 (Step 3)
新基準で定めている取引価格とは、顧客への商品又はサービスの提供と引換えに、企業が受け取ると見込まれる対価であり、その対価を変動させる事象を企業は取引価格として考慮する必要があります。また、すべての契約において収益の重大な戻し入れにならない範囲の変動対価の最低金額を取引価格の見積に含める必要があります。(例:ディスカウント、インセンティブ、返品権等)
独立した履行義務に取引価格を配分 (Step 4)
新基準上、企業は相対的な独立販売価格に基づいて取引価格を各履行義務に配分する必要があります。その際、独立販売価格が直接的に観察可能でない場合には、企業は見積を用いる必要があります。また契約開始後における独立販売価格の変動に対しては、取引価格の再配分は行わないと規定されています。
各履行義務の充足による収益認識 (Step 5)
新基準ではステップ2で識別された独立した履行義務が各々充足されたタイミングで収益が認識されます。また、顧客が約束した商品又はサービスに対する支配(Control)を得た時点で履行義務が充足されたと判断されるため、例え企業が顧客に対する商品の出荷を完了していても、顧客が商品に対して支配を得ていない場合においては、履行義務が充足されたと判断されないと規定されています。