米国輸出規制の概要 後編:要輸出許可の判定

前編では、米国輸出規則(EAR)の概要について解説しました。本編では、要輸出許可の判定の流れについて、BISより発行されている各種資料を用いて解説します。

 次の資料が、輸出許可の要否を確認する上で使用する主な資料になります。

ECCN(Export Control Classification Number)EARで規制対象である品目の分類番号であり、品目の分類、形態、規制理由等から分類されている、5桁の番号。(例)6A002: オプティカル・センサー
CCL(Commerce Control List)EARで規制されている品目のリスト。EAR規制対象である品目及びスペック、規制理由、規制レベル、免除規定等が記載されている。CCLに記載されていない品目は、EAR99と定められている。
Country Chart国ごとに、適用されるEARでの規制理由が記載されているリスト。国と規制理由がマトリックスで表記されている。
DPL(Denied Persons List)米国輸出管理法に違反し、輸出権限を停止されている個人、企業等が記載されているリスト。
Entity List大量破壊兵器拡散の懸念や米国の外交政策上の利益に反するもしくは、その懸念がある個人、企業等が記載されているリスト

 次のEXPORT CONTROL DECISION TREE(出典:BIS)が一般的な、要輸出許可の判定の流れを示しており、このEXPORT CONTROL DECISION TREEにそって、各確認ステップについて解説します。

Export Control Decision Tree

  1. 取扱産品(製品、部品、材料、ソフトウェア、技術等)がEARの対象であるかどうか判定します。前編で解説したとおり、次の点から、EAR対象品目であるかどうか判定します。
  • 取扱産品が、米国内にあるかどうか。
  • 取扱産品が、米国原産であるかどうか。
  • 海外で製造されている場合、一定割合以上のEAR規制対象である米国原産品が含まれているかどうか、もしくは、外国直接品であるかどうか。
  1. CCLを参照し、取扱産品にECCNが付与されているかどうか確認します。CCLは膨大で検索が難しい場合もありますので、アルファベット順の品目インデクスがあるので、まず、品目インデックスを検索するのがよいでしょう。また、メーカー、サプライヤーに問合せれば、ECCNが付与されているかどうか分かる場合もあります。ECCNが付与されていない品目である場合は、BISにECCNを付与してもらうことができます。
  1. ECCN番号が付与されてなく、EAR99に該当する場合でも、一般禁止行為4から10に該当するかどうか、確認が必要です。
  1. 一般禁止行為4から10に抵触していないか確認します。

本書では、一般禁止行為4と5に焦点を当てます。

一般禁止行為4: 禁止命令で禁止された行為

DPLを使用し、禁止命令対象者との取引に該当しないか、確認します。

一般禁止行為5: 禁止されている最終使用用途で、もしくは最終使用者に輸出、再輸出、見なし輸出すること

EARでは、輸出、再輸出、見なし輸出を行う者が、EAR対象品目を禁止されている特定の最終使用用途もしくは取引が禁止されている最終使用者向けに、輸出、再輸出、見なし輸出されることを事前に承知している場合には、輸出許可の取得が義務付けられています。規則やEntity Listを確認します。

  1. 上記②の確認により、取扱産品にECCNが付与され、特定の規制対象となっている場合は、輸出先国が規制対象であるかどうか、Country Chartを参照して確認します。輸出先の国に”X”マークがない場合は、輸出許可は不要です。ただし、”X”マークがある場合は、マークしてある規制が対象となり、輸出許可が必要になる可能性があります。ただし、輸出許可が免除される場合もありますので、免除規定についても確認します。免除規定が適用にならない場合は、その段階で、要輸出許可が確定します。輸出許可は、商務省が運営するSNAP-R(Simplified Network Application Process Redesign)から電子申請します。

 以上、前編と後編で、EARの概要について解説しました。EARついては、ここ数年、規則の改正が続き、また今後も進展が予想されますので、最新情報については、BISのホームページを閲覧し、また個別事象の対応については専門家へのご相談をお願いします。

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